住所から謄本が取れない?父の実家の土地を調べてわかったこと
不動産会社に勤め始めた頃、仕事を通じて登記簿謄本や公図など、それまで馴染みのなかった不動産の資料について知るようになりました。
そこでふと思ったのが、
「自分のルーツである両親の実家は、登記上どうなっているんだろう?」
ということでした。
これは今から5年ほど前の話です。
当時は父の実家をリフォームする予定などまったくありませんでした。私も会社員として働いていた頃です。
まさか数年後、自分がこの家を片付け、直し、賃貸に出すことになるとは想像もしていませんでした。
住所を調べても謄本が出てこない
まずは父の実家の住所をもとに、土地と建物の登記を調べてみました。
ところが、普段使っている住所から探しても該当するものが見つかりません。
当時勤めていた不動産会社の社長にも相談し、一緒に現地を管轄する法務局へ電話で問い合わせました。
それでも分かりませんでした。
不動産を仕事にしている社長も驚いていたのを覚えています。
そこで社長から、
「公図から追ってみたら?」
とヒントをもらいました。
公図から場所を探してみる
公図を取得し、地図と照らし合わせながら父の実家が建っていると思われる場所を探しました。
すると、それらしい土地を特定することができました。
その土地の謄本を取得すると、ようやく登記情報が出てきました。
ただ、そこに記載されている所有者の名前を見ても、当時の私には、
「この人たちは誰なんだろう?」
ということしか分かりませんでした。
父も近所の親戚も、父の実家が借地に建っていること自体は昔から知っていました。
「組合の土地だ」
という話も聞いていました。
ところが、何の組合なのかを知っている人がいません。
私自身、それが水利組合の土地だったと分かったのはずっと後のことです。
実際に地代の領収書を受け取ったことで、ようやく土地の謄本で見た情報と、地域で昔から続いていた借地の話がつながりました。
建物の謄本は見つからなかった
土地については公図からたどることができましたが、建物については登記を確認することができませんでした。
試しに近隣にある親戚の家も調べてみると、そちらは土地も建物も登記されています。
同じ地域にある家でも、すべてが同じように整理されているわけではない。
このとき初めて、古くから続く地方の不動産には、現在一般的に考える不動産の管理方法とは違う歴史があることを実感しました。
父と叔父にも一緒に市役所へ行ってもらった
数年後、空き家になった家の情報を調べに市役所へ行きました。
このときは最初から、相続人である父と叔父にも同行してもらいました。
本人がいなければ確認できない情報があるかもしれません。
また、私が調べた内容をあとから二人に細かく説明するよりも、一緒に役所へ行って同じ説明を聞いてもらった方が話が早く、説得力もあります。
市役所で祖父名義の固定資産関係の資料を確認したところ、法務局では見つけることのできなかった古い建物の情報が、名寄帳に残っていることが分かりました。
法務局だけを調べていたら、知ることのできなかった情報でした。
今度は土地の所有者を探す
その後、実際に父の実家を賃貸に出すことになりました。
そこで新たな問題が出てきます。
「借地の上にあるこの家を、第三者に貸してもいいのだろうか?」
土地所有者側の承諾を得ておきたいと思いました。
ところが、今度は誰に話をすればいいのか分かりません。
現地へ行った際に近所の方々に聞いて回り、2、3回足を運んだ末に、ようやく代表者の方を教えてもらうことができました。
父と一緒に訪ねると、幸い在宅されていました。
事情を説明すると、
「こんな田舎に住む人いるの?」
と言われました。
それでも、住む人がいるのであれば貸して構わないとのこと。
そして、建物がある間は毎年の地代をきちんと組合へ支払ってほしいと確認することができました。
こうしてようやく、安心して賃貸へ進めることができました。
不動産情報は、一か所ですべて分かるとは限らない
この一連の調査で強く感じたことがあります。
それは、不動産の情報が必ずしも一つの場所に整理されているわけではないということです。
法務局で登記を調べても分からない。
公図から土地を探す。
市役所では別の情報が見つかる。
土地について昔から知っている父や親戚に聞く。
さらに近所の人に尋ねて、ようやく現在の代表者へたどり着く。
特に古くから続く地方の土地や建物では、今の不動産取引の感覚だけでは分からないことがありました。
制度も違えば、昔の人たちの不動産に対する意識や管理の仕方も違います。
私はこの父の実家を調べたことで、そうした違いを身をもって知ることになりました。
そして5年前、単純な好奇心から始めた調査が、数年後にこの家を実際に再生して貸し出すときの土台になるとは、当時の私はまったく想像していませんでした。