父の実家の修繕が終わってから、約2年間で2組の入居者さんとのご縁がありました。

1組目は、地域で福祉事業を始めたいという法人。

当初は訪問介護サービスの拠点として利用する予定だったそうです。

しかし、求人を出しても人が集まらず、事業を開始することができないまま退去。

入居期間は3〜4ヶ月ほどでした。

その後、半年以上の空室期間を経て、2組目の入居者さんが決まりました。

今度は一般的な住居としての利用です。

家賃は月4万5,000円。

実はつい先月、

「トイレに換気扇をつけたい」

という相談がありました。

長く住んでもらえるならと、管理会社に業者さんを手配してもらい家賃約1ヶ月分の費用をかけて取り付けたばかり。

ところが今月、退去の連絡が入りました。

今回は再募集しないことにしました

まだ住める家です。

修繕もしてあります。

そのため、もう一度募集するという選択肢もあります。

でも今回は、再募集せず建物を解体する方向で考えています。

理由は、2組に貸してみたものの、長期入居につながらなかったこと。

駐車場も用意しました。

家も修繕しました。

遠方でも対応してくれる管理会社も見つけました。

必要な設備にもお金をかけました。

私の中では、この家を残すためにできることは一通りやったと思っています。

それでも長期的な賃貸につながらないのであれば、「もう少しやれば何とかなるかも」を繰り返すのではなく、ここで一区切りにすることにしました。

そもそも、この家は借地に建っています

この家には、もうひとつ大きな事情があります。

土地が自分のものではありません。

約70年前、祖父たちが暮らしていた場所が土砂崩れによって住めなくなったことをきっかけに、当時、馬の餌などを置いていた土地に家を建てることを認めてもらったそうです。

現在は地域の水利組合が関係する土地となっており、私も賃貸に出す前には代表者の方に直接会い、

「この家を人に貸しても大丈夫ですか?」

と確認しました。

了承はいただけましたが、そのとき言われたのが、

「こんな田舎に住む人いるの?」

という言葉。

結果的には2組の方に借りていただけたので、住みたい人が全くいなかったわけではありません。

ただ、長期的な入居にはつながりませんでした。

実際に募集してみたからこそ、この地域で賃貸を続ける難しさも分かりました。

両隣もすでに更地になっています

この土地には、同じような経緯で建てられた家が3軒並んでいました。

しかし住んでいた方々が亡くなり、空き家になっていきました。

1軒は数年前に解体。

もう1軒も昨年解体され、現在は更地です。

そして最後に残ったのが、父の実家でした。

私の家だけは一度再生し、賃貸物件として使うことができました。

ただ、この先もずっと私が管理できるとは限りません。

今は遠方まで行くことができます。

でも、10年後、20年後も同じように動けるかは分かりません。

借地だったことが、最後はメリットになるかもしれない

これまでは、

「借地だから売却しにくい」

「最後は更地にして返さなければならない」

という部分をデメリットとして考えていました。

建物自体はまだ使えるので、本来なら売却して誰かに引き継いでもらう方法も考えたいところです。

ただ、遠方であることに加え、借地で地域独自の取り決めもあります。

売却した相手が将来きちんと土地を返してくれるのか。

地域の方と問題なく付き合っていけるのか。

そこまで私が保証することはできません。

そう考えると、知らない誰かに無理に引き継ぐより、自分が動けるうちに建物を解体し、きちんと土地を返す方が安心なのではないかと思うようになりました。

そして、よく考えてみれば、

土地を所有していないことが、最後はメリットになるのかもしれません。

もし土地まで所有していたら、建物を解体しても遠方の土地は残ります。

草刈りなどの管理も必要ですし、今度は土地そのものの売却先を探さなければなりません。

借地であれば、必要な手続きを確認して建物を解体し、土地を返還することで一区切りつけられます。

「まだ使えるから残す」だけが正解ではない

5年間空き家だった父の実家。

両親には、

「遠いんだから放っておけばいい」

「あなたがやる必要はない」

「お金も労力もかかる」

と何度も反対されました。

それでも残置物を撤去し、自分で修繕し、管理会社を探し、駐車場を用意して、実際に2組の方に使っていただきました。

だから今回の解体を、失敗だとは思っていません。

むしろ実際にやってみたからこそ、

「この家を残すためにできることはやった」

と思えています。

不動産は、建物がまだ使えるからといって、必ず残すことが正解とは限りません。

地域の需要、管理のしやすさ、土地の権利関係、維持費、そして自分自身がこれから何年管理できるのか。

そこまで考えて出口を決める必要があります。

残せる方法は試しました。

できることもやりました。

だから今度は、自分が動けるうちにきちんと終わらせる。

放置されていた家を再生することだけではなく、最後まで責任を持って終わらせることも、空き家と向き合うひとつの方法なのだと思います。

これから水利組合にも改めて確認し、遠く離れた北東北で解体をお願いできる業者を探します。

この家での最後の仕事が、これから始まります。